この記事の要点
- 走って腰が痛くなるフォームの典型は、地面を後ろへ押す局面で腰が反り、骨盤が前に倒れる形。
- 原因は体幹の弱さより、股関節の付け根の前側が硬く、脚を後ろへ送る動きが足りないことが多い。
- 股関節の前側の硬さを整体でゆるめ、お尻で脚を後ろへ送る動きを覚えてから体幹を鍛える順番が効率的。
走っていると腰の下の方が重くなり、ペースを上げるほどつらくなる。腰痛があると「体幹が弱いから」と言われ、腹筋や体幹トレーニングを頑張る方が多いのですが、理学療法士の立場からは、その前に股関節を確かめることをおすすめしています。走るときに腰が痛くなるフォームは、多くの場合、股関節で行うはずの動きを腰が肩代わりしている状態だからです。この記事では、腰に負担がかかる走り方の仕組みと、体幹より先に股関節を整える理由を解説します。
腰が痛くなるフォームの共通点は「脚を後ろへ送る局面」
ランニングの一歩は、着地 → 体重を乗せる → 地面を後ろへ押して脚が後ろへ流れる、という流れで進みます。腰に負担がかかりやすいのは最後の、脚が体より後ろへ流れていく局面です。
このとき股関節は、太ももを体より後ろへ伸ばす動き(股関節の伸展)をしています。股関節が十分に伸びれば、骨盤はほぼ立ったまま脚だけが後ろへ流れます。ところが股関節の付け根の前側が硬いと、脚を後ろへ送る途中で骨盤ごと前に引っ張られ、足りない分を腰を反らせて補うことになります。
外から見えるサイン
- お尻が後ろに突き出て、腰が反った姿勢で走っている
- 脚が後ろへ流れず、体の真下より前で着地しやすい
- ペースを上げようとすると、さらに腰が反る
ゆっくり走るときは平気でも、ペース走や坂道でだけ腰が痛む場合も同じ仕組みが考えられます。スピードを上げたり坂を上ったりすると、脚を後ろへ送る範囲が大きくなるため、股関節の不足分が表に出やすくなるのです。
なぜ体幹より先に股関節なのか
体幹トレーニングは、骨盤と背骨を安定させるために役立ちます。ただ、股関節が後ろへ伸びない状態のまま体幹だけを固めても、脚を後ろへ送るための動きの量は変わりません。走るたびに「どこかで反らないと脚が後ろへ行かない」という状況が残るため、体幹を固めるほど腰まわりの筋肉の緊張が増すこともあります。
理学療法士が見る順番は、まず関節がどれだけ動くか、次にその動きを自分の筋肉で出せるか、最後にそれを走る速さの中で保てるか、です。股関節が動かないことが出発点なら、体幹はその後に鍛える方が、同じ時間でも変化が出やすくなります。
腰が反る流れを順番に
- デスクワークなどで股関節の付け根の前側が縮んだまま固まる
- 走ると脚を後ろへ送る範囲が足りない
- 骨盤が前に倒れ、腰が反って足りない分を補う
- 腰の後ろの筋肉が走っている間ずっと緊張し、重さや痛みになる
股関節がなぜ硬くなるのかは、ランナーの股関節が硬い理由と整え方で詳しく解説しています。
理学療法士が初回評価で見ること
B.E.Tの初回評価では、腰そのものより、腰が反らざるを得ない理由を探します。
- 仰向けで片膝を抱える:片膝を胸に引き寄せたとき、反対側の太ももがベッドから浮くか。浮く場合、付け根の前側が硬いサインです。
- うつ伏せで脚を後ろへ上げる:お尻から脚が上がるか、腰が先に反って持ち上げていないか。
- 腕を上げたときの腰:両腕をまっすぐ上げると腰が反る場合、背中の上の方(胸郭)の硬さを腰で補っています。
- 呼吸で下の肋骨が動くか:息を吸ったとき肋骨が横に広がらず、腰が反って胸を持ち上げていないか。
- 壁立ち:後頭部・肩甲骨・お尻・かかとを壁につけたとき、腰と壁の間に手のひら以上の隙間があるか。
腕の振りで上半身が丸まり、それを腰で起こしているタイプもいます。その場合は胸郭と肩甲骨も合わせて見ます(走ると猫背になる人のフォーム)。
B.E.Tの60分:股関節を伸ばし、お尻で送る
1回60分は「評価 → 整体 → トレーニング」の順です。走ると腰が痛いケースでは、次のように進めることが多くなります。
整体
股関節の付け根の前側(腸腰筋や太ももの前の筋肉)と、腰の後ろで頑張り続けている筋肉をゆるめます。あわせて、股関節を後ろへ伸ばす動きと、背中の上の方をひねる動きを戻します。腰をゆるめるだけでなく、腰が反らなくても済む関節の余裕を作ることが目的です。
トレーニング
- 仰向けでお尻を持ち上げる運動を、腰を反らせずにお尻だけで行う練習
- 片膝立ちで骨盤を立てたまま、後ろの脚の付け根を前へ伸ばす練習
- 立った姿勢で片脚を後ろへ引くとき、腰が反らずにお尻で脚を送る練習
- 最後に、息を吐きながらお腹を薄くする体幹の運動で、骨盤を立てたまま保つ力をつける
体幹の運動は最後の段階に置いています。股関節で脚を後ろへ送れるようになってから行うと、腰で代わりに頑張る癖が出にくくなります。全体の考え方はB.E.Tのメソッドをご覧ください。
自宅でできるセルフチェックと最初の一歩
セルフチェック:仰向けで片膝抱え
- 床に仰向けになり、両脚をまっすぐ伸ばす。
- 右膝を両手で抱え、胸の方へゆっくり引き寄せる。
- このとき、伸ばしている左脚の太ももの裏が床から浮かないかを確認する。
- 反対側も同じように行う。
伸ばした脚の太ももが浮く、または膝が曲がってくる場合、その側の股関節の付け根の前側が硬く、走るときに腰が反りやすい状態です。
最初の一歩:片膝立ちの付け根ストレッチ
- 右膝を床につけ、左足を前に出して片膝立ちになる。
- お腹を軽く引き込み、骨盤を立てる(腰を反らせない)。
- そのまま体を少しだけ前へ移し、右脚の付け根の前側が伸びるのを感じて20〜30秒。
- 左右2回ずつ。
腰が反って伸び感が腰に来る場合は、前へ移す量を減らします。付け根の前側に感じる位置を探すことが大切です。
よくある失敗と、受診の目安
- 腹筋運動を増やして腰を守ろうとする:上体を起こす腹筋は股関節の前側も縮めるため、走るときの反りが変わらないことがあります。
- 意識して上半身を前傾させる:股関節が伸びないまま前傾すると、腰の反りが強まることがあります。
- 痛みが出てからストレッチを始める:走る前の準備として股関節を動かしておく方が、腰への負担は減らしやすくなります。
- 腰だけを強くマッサージして走りに戻る:腰の筋肉は反りを支えるために緊張しているので、股関節が変わらないままでは同じ張りが戻ってきます。
受診の目安
お尻から脚にかけてのしびれや痛みがある、足に力が入りにくい、安静にしていても痛む、夜間に痛みで目が覚める、急に強い痛みが出て動けない、発熱をともなう、といった場合は、走ることもトレーニングもいったん止めて、整形外科などの医療機関で診てもらってください。特にしびれは、腰の神経が関わっている可能性があります。
腰を守るために、まず股関節を動く状態へ
走ると腰が痛くなるフォームは、腰の弱さではなく、股関節の役割を腰が引き受けているサインです。股関節を後ろへ伸ばせる余裕を作り、お尻で脚を送れるようになると、腰は反って補う必要がなくなります。体幹を鍛えるのはその次の段階です。
B.E.Tでは理学療法士が片膝抱えや壁立ちで原因を確かめ、整体とトレーニングで腰に頼らない走りの土台を作ります。初回体験90分¥5,500はネットで空き枠を選んで予約できます(予約ページ)。
よくある質問
Q. ランニングで腰が痛いのは体幹が弱いから?
体幹の弱さが関わることもありますが、股関節の付け根の前側が硬く、脚を後ろへ送れない分を腰の反りで補っているケースをよく見ます。体幹トレーニングの前に、仰向けで片膝を抱えたときに反対の太ももが浮かないか確かめてみてください。
Q. 走ると腰が痛いときは前傾を強めた方がいい?
股関節が後ろへ伸びない状態で前傾を強めると、腰の反りがかえって増えることがあります。フォームを意識で変える前に、股関節の動きとお尻で脚を後ろへ送る力を整えるのがおすすめです。
Q. 腰痛があってもランニングは続けていい?
しびれ、安静時の痛み、夜間痛、急な強い痛みがある場合は、まず医療機関を受診してください。それらがなく、走った後の重さ程度であれば、距離やペースを落としながら股関節の準備運動を取り入れ、変化を確認しながら続ける方法もあります。