この記事の要点
- 走ると猫背になり肩が上がるのは、胸郭がひねれず、腕振りを肩の付け根だけで行っていることが多い。
- 下の肋骨が呼吸で広がらないと、疲れてきたとき首と肩の筋肉で息を吸い、肩がすくむ。
- 胸郭と肩甲骨の動きを整体で戻し、肋骨を広げる呼吸と肩甲骨を下げて使う練習をすると、意識しなくても姿勢が保ちやすい。
走り始めは背すじが伸びているのに、後半になると背中が丸まり、肩がすくんで首まわりがこわばってくる。写真に写った自分の走る姿を見て、猫背に驚いたという声もよく聞きます。「胸を張って」「肩の力を抜いて」と意識しても、数百メートルで元に戻ってしまうのは、意識の問題ではなく、胸郭と肩甲骨が動く準備ができていないからです。この記事では、理学療法士の立場から、走ると猫背になる・肩が上がる仕組みと、その整え方を解説します。
走ると猫背になるのは「腕振り」と「呼吸」の肩代わり
走るときの上半身には、2つの大きな仕事があります。1つは脚の動きと反対向きに腕を振り、体のねじれのバランスを取ること。もう1つは、運動量に見合うだけの空気を取り込むことです。
どちらも本来は、肋骨でできたかご(胸郭)と、その上を滑る肩甲骨が主役です。胸郭が適度にひねれ、呼吸で下の肋骨が横に広がれば、腕は肩の力を抜いたまま振れ、息も楽に入ります。ところが胸郭が硬いと、この2つの仕事を肩の付け根と首まわりの筋肉が肩代わりすることになり、その結果として背中が丸まり、肩が上がっていきます。
こんなサインはありませんか
- 走った後、首の付け根から肩の上がパンパンに張る
- 腕を前後ではなく、体の前で左右に振っている
- ペースを上げると、あごが前に出て呼吸が浅くなる
猫背と肩の上がりは別々の悩みに見えますが、どちらも胸郭が動かないことから始まっている点で共通しています。そのため、背中を伸ばす意識と肩を下げる意識を別々に持つより、胸郭という一つの場所から整える方が効率的です。
胸郭がひねれないと、肩甲骨ごと前へ巻き込まれる
腕を後ろへ引くとき、本来は胸郭が少しひねられ、肩甲骨が背骨の方へ寄ることで、肩の前側は開いたまま腕が後ろへ動きます。胸郭のひねりが小さいと、腕を後ろへ引く余裕がなくなり、腕は体の前だけで小さく振られるようになります。
体の前で腕を振り続けると、肩甲骨は外へ開いて前に回り込み、肩は内へ巻いていきます。そこに背中の上の方の丸まりが加わって、走る姿勢がだんだん猫背になっていきます。デスクワークで背中の上が丸まったまま固まっている方は、走り始める前からこの状態に近いことが多いです。
順番で整理すると
- 背中の上の方(胸椎)が丸まって固まり、胸郭がひねりにくい
- 腕を後ろへ引けず、体の前で振る
- 肩甲骨が外へ開いて前へ回り込む
- 肩が内に巻き、背中がさらに丸まる
猫背そのものの原因や日常での整え方は猫背の改善方法でも詳しく解説しています。
肩が上がるのは、首と肩で息を吸っているから
呼吸の主役は、肋骨の下にある横隔膜です。息を吸うと横隔膜が下がり、下の肋骨が横へ広がります。ところが背中が丸まり、お腹まわりが固まっていると、下の肋骨は広がりにくくなります。
それでも走れば酸素が必要なので、体は首の前や肩の上の筋肉を使って、胸の上の方を持ち上げて息を吸おうとします。これが、疲れてくると肩がすくむ大きな理由です。肩を下げようと意識しても、息を吸う場所が変わらなければ、苦しくなった瞬間にまた肩が上がります。
また、背中を丸めた姿勢を腰で起こそうとすると、今度は腰が反って負担がかかることもあります。上半身の崩れが腰の痛みにつながる流れは、ランニングで腰が痛くなるフォームで解説しています。
理学療法士が初回評価で見ることと、B.E.Tの60分
初回評価では、走る姿を外から直すのではなく、胸郭と肩甲骨が「動ける状態か」を確かめます。
- 呼吸で下の肋骨が動くか:仰向けで脇腹の下の肋骨に手を当て、息を吸ったときに横へ広がるか、胸の上や肩が先に持ち上がるか。
- 座って上半身をひねる角度:骨盤を固定したまま、胸からどこまで回れるか。左右差もよく見られます。
- 腕を上げたときの背中と腰:両腕をまっすぐ上げるとき、背中の上が伸びるか、腰が反って代わりに上げているか。
- 肩甲骨の位置と動き:立った姿勢で肩甲骨が外へ開いていないか、腕を後ろへ引いたときに背骨の方へ寄るか。
60分の中では、整体で背中の上の方、肋骨の間、胸の前の筋肉、首から肩の上の筋肉の緊張をゆるめ、胸郭のひねりと肩甲骨の滑りを戻します。トレーニングでは、下の肋骨を広げる呼吸の練習から始め、四つ這いで胸からひねる運動、肩甲骨を下げたまま腕を後ろへ引く運動へと進めます。走るフォームの指導ではなく、意識しなくても上半身が起きていられる身体を作るのが目的です。全体の流れはB.E.Tのメソッドで紹介しています。
自宅でできるセルフチェックと最初の一歩
セルフチェック:座ったまま胸からひねる
- 椅子に浅く座り、両足を床につけて、腕を胸の前で組む。
- 骨盤と膝が動かないようにして、胸から右へゆっくり体をひねる。
- 正面に対して肩がどこまで回ったかを確認し、左も同じように行う。
肩が正面から45度ほども回らない、左右で大きく違う、ひねると腰や首だけが動く感じがする場合は、胸郭のひねりが不足しています。
最初の一歩:横向きで胸を開く
- 横向きに寝て、上の膝を90度に曲げて床につけ、両腕を前にそろえて伸ばす。
- 上の膝が床から浮かないように押さえたまま、上の腕を天井を通って後ろへ開いていく。
- 目線で手を追い、胸が開ききったところで深呼吸を2回。ゆっくり元へ戻す。
- 左右5回ずつ。
腕だけを後ろへ倒すのではなく、胸の骨ごと回すイメージで行います。肩の前に痛みが出る場合は、開く範囲を小さくしてください。肩が内に巻く癖が強い方は巻き肩の整え方もあわせて読んでみてください。
よくある失敗と、受診の目安
- 胸を張ることだけを意識する:背中の上が動かないまま胸を張ると、腰を反らせて胸を持ち上げる形になりやすく、腰に負担が移ります。
- 肩甲骨を強く寄せ続けて走る:寄せたまま固めると腕が振れなくなり、かえって肩と首が力みます。寄せるより、下げたまま自由に動ける状態が理想です。
- 首と肩だけをマッサージで済ませる:首や肩は呼吸と腕振りを代わりに頑張っている側なので、胸郭が変わらなければまた張ります。
受診の目安
走ると胸が締めつけられるように痛む、ペースに見合わないほど息苦しい、動悸やめまいがある、という場合は姿勢の問題とは限りません。走るのをやめて、早めに医療機関を受診してください。また、首から腕や手にかけてのしびれ、力の入りにくさ、安静時や夜間の痛みがある場合も、トレーニングより先に医療機関で診てもらうことをおすすめします。
胸郭が動けば、肩は自然に下りてくる
走ると猫背になる、肩が上がるのは、上半身の意識が足りないのではなく、胸郭と肩甲骨が腕振りと呼吸の仕事を受け持てない状態だからです。胸からひねれる余裕と、下の肋骨で息を吸える状態を作ると、肩と首は本来の役割に戻り、後半まで上半身が起きたまま走りやすくなります。
大阪・心斎橋(南船場)のB.E.Tでは、理学療法士が呼吸や胸郭のひねりを評価し、整体とトレーニングで上半身の土台を整えます。初回体験90分¥5,500で、ご自身の胸郭の動きを確かめてみてください(ネットで空き枠を選ぶ)。
よくある質問
Q. ランニングで猫背にならないコツは?
走りながら胸を張る意識より、走る前に胸郭と肩甲骨を動かしておくことが効果的です。座って胸からひねる、横向きで胸を開くといった準備を行い、下の肋骨を広げる呼吸を確認してから走り出すと、後半の崩れが出にくくなります。
Q. 走ると肩が上がるのはなぜ?
疲れて呼吸が苦しくなったとき、下の肋骨が広がらないと、首や肩の筋肉で胸の上を持ち上げて息を吸おうとするためです。腕を体の前で振る癖も肩をすくませます。胸郭の動きと呼吸の仕方から見直すのがおすすめです。
Q. 腕振りは意識して直した方がいい?
胸郭のひねりが足りないまま腕振りの形だけを変えると、肩や腰に力みが移ることがあります。まず胸郭と肩甲骨が動く状態を作り、そのうえで自然に腕が後ろへ引ける感覚をつかむ方が、無理なく変わりやすくなります。