この記事の要点
- 膝は足首と股関節にはさまれた「中継ぎ」の関節。50代以降は上下の関節が硬くなりやすく、動かない分の負担が膝に集まりやすい。
- 膝を守る筋トレは、足首 → 股関節 → お尻 → ゆっくり降ろす動き → 量の順で積み上げると、膝に頼らない脚になりやすい。
- 回復に時間がかかるようになる年代だからこそ、痛める前に整え、腫れや熱感・夜間痛などがあれば先に医療機関へ。
若い頃は平気だった下りで、最近は膝が気になる。ひざ痛の話を山仲間から聞くたびに、自分もいつかと不安になる。50代から登山を始めた方、あるいは久しぶりに再開した方からは、こうした相談を受けることがよくあります。年齢を理由に諦める必要はありません。理学療法士として総合病院と訪問リハビリで多くの膝を見てきた立場から言えば、膝を守るために大切なのは、膝そのものより膝の上下にある関節を先に整える順番です。
50代から膝に負担が集まりやすくなる理由
膝は、下にある足首と上にある股関節にはさまれた関節です。足首と股関節が大きく動けていれば、膝は両者をつなぐ中継ぎ役として、比較的小さな仕事で済みます。
ところが年齢とともに、足首の前側や股関節の前側は少しずつ硬くなりやすくなります。座っている時間が長い生活が続くと、その傾向はさらに強まります。上下の関節が動かない分、下りの一歩や段差でかかる負担は、行き場を失って膝に集まります。膝が弱くなったというより、膝に回ってくる仕事が増えたと考えると分かりやすいでしょう。
回復にかかる時間も変わる
50代以降は、負担を受けた組織が元に戻るまでに時間がかかるようになります。若い頃なら一晩で抜けた疲れが残ったまま次の山に行けば、小さな負担が積み重なりやすくなります。だからこそ、痛みが出る前に負担のかかり方そのものを変えておくことに意味があります。
病院や訪問リハビリの現場では、膝が痛くなってから動く量を減らし、その間に足首や股関節がさらに硬くなって、また膝に負担が戻るという循環をたびたび目にしてきました。この循環に入る前に、上下の関節を動く状態に保っておくことが、長く山を続けるための土台になります。
理学療法士が初回評価で見ること
B.E.Tの初回評価では、膝の痛みの有無だけでなく、膝に仕事を回している上下の関節を順に確認します。
しゃがみで踵が浮くか、膝が内に入るか
両足をそろえてしゃがんだとき、踵が床から浮く場合は足首が前に倒れにくくなっています。しゃがむ途中で膝が内側に寄る場合は、股関節とお尻の横の筋肉の働きも合わせて確認します。
仰向けで股関節がどこまで曲がるか、伸びるか
仰向けで片膝を胸に近づける動きと、反対の脚が床から浮かないかを見ます。曲がる・伸びるの両方が狭い方は、登りでも下りでも膝が主役になりやすい状態です。
立ち上がりで膝が先に出るか
椅子から立つとき、お尻が先に引けて上体が前に倒れるか、膝が先に前へ出て太ももで押し上げるかを横から見ます。日常の立ち座りの癖は、そのまま山の段差の使い方に表れます。
膝を守る筋トレの順番は5段階
膝を守る筋トレというと、太ももの前を鍛える種目が思い浮かびますが、私たちはそれを最初には置きません。次の順番で、膝に頼らない脚を積み上げていきます。
- 足首:ふくらはぎと足首の前側をゆるめ、すねを前に倒せる範囲を戻す。下りで足首がクッションとして働けるようにする。
- 股関節:脚の付け根の前側とお尻まわりをゆるめ、曲がる・伸びる範囲を戻す。
- お尻:お尻上げや横向きで脚を持ち上げる種目で、股関節を支えるお尻の大きな筋肉と横の筋肉を目覚めさせる。
- ゆっくり降ろす動き:椅子にゆっくり座る、低い台からゆっくり降りるなど、下山のブレーキに近い動きで膝の向きを保つ練習をする。
- 量:最後に回数・段差の高さ・重さを少しずつ増やし、長い行程でも崩れない持久力をつける。
太ももの前の筋力は4と5の段階で自然と鍛えられます。順番を飛ばして5から始めると、膝主導の使い方のまま負荷だけが増えてしまいます。下りで膝が痛む仕組みは登山の下りで膝が痛い人の鍛え方で詳しく解説しています。
B.E.Tの60分での進め方と、体重のこと
B.E.Tの1回60分は「評価 → 整体 → トレーニング」の順です。上の5段階のうち1と2は主に整体で、3〜5はトレーニングで進めます。整体で動く範囲を戻し、その範囲を自分の筋肉で支えられるようにする流れは整体×トレーニングとはで紹介しています。
もう一つ、膝の負担に関わるのが体重です。体重が増えると、一歩ごとに膝が受け止める重さも増え、それが下りでは何千回も繰り返されます。B.E.Tでは、目標と期限から1日のカロリーとPFC(たんぱく質・脂質・炭水化物)を設計し、無料アプリ「カロみる」に記録していただいた内容を、来店時にトレーナーが対面で確認します。極端な糖質制限は行わず、筋肉を落とさないためのたんぱく質の取り方や、山行の前後の食事の組み立てを一緒に見直します。50代の食事の考え方は50代のダイエットは関節を守る順番でも参考にしてください。
自宅でできるセルフチェックと最初の一歩
セルフチェック:腕を組んで椅子の立ち座り5回
- 座面の高さが膝くらいの椅子に浅めに座り、腕を胸の前で組む。
- 手を使わずに立ち上がり、またゆっくり座る。これを5回繰り返す。
- 立つときに膝が先に前へ出ていないか、座るときにドスンと落ちていないか、膝が内側に寄っていないかを、横と前から確認する。
座るときに最後まで速さをコントロールできない、膝が寄るといった様子があれば、下りで膝に負担を集めやすい使い方をしている目安です。
最初の一歩:タオルを使った足首の前倒し
壁に向かって片足を前に出し、かかとを床につけたまま膝を壁に近づけます。かかとの下にたたんだタオルを置いて、かかとが浮いたらタオルが動くようにしておくと、ごまかしに気づけます。左右10回ずつ、痛みのない範囲で行ってください。
現場でよく見る、膝を痛めやすいパターン
- 「年のせい」と決めて歩く量を減らす:動かさない期間が長いほど上下の関節は硬くなり、次に歩いたときの膝の負担が増える。
- 太ももの前の筋トレから始める:膝主導の癖が残ったまま負荷が増える。
- 痛みが出てから一気に鍛える:炎症がある状態での高負荷は長引く原因になる。
- 山行の間隔を詰めすぎる:回復に時間がかかる年代では、疲れが抜けきらないうちの連続した山行が負担を積み重ねる。
受診の目安と、B.E.Tに相談できること
膝が腫れて曲げ伸ばしがしにくい、膝のまわりが熱を持っている、夜間や安静にしていても痛む、歩き始めに強い痛みがあり時間がたっても引かない、膝が急にガクッと抜ける、といった場合は、トレーニングより先に整形外科などの医療機関を受診してください。整体は医療行為ではないため、膝の状態を確かめる役割は医療機関にあります。
まだ痛みはないけれど不安がある、医師から運動の許可が出ている、という方は、痛める前に整える段階にいます。大阪・心斎橋(南船場)のB.E.Tでは、理学療法士が足首・股関節・お尻の順に評価し、整体とトレーニングで膝を守る脚を作っていきます。ネット予約から初回体験90分 ¥5,500をお申し込みいただけます。
よくある質問
Q. 50代から登山を始めても膝は大丈夫ですか?
年齢そのものより、足首と股関節がどれだけ動くか、お尻で体重を受け止められるかが膝の負担を左右します。始める前や始めた直後に、しゃがみや椅子の立ち座りで膝が内に入らないかを確認し、上下の関節から整えておくと、膝に負担を集めにくい状態で登山を続けやすくなります。
Q. 50代が登山のために膝を鍛えるなら、どんな筋トレがいいですか?
いきなり太ももの前を鍛えるより、足首と股関節の動く範囲を戻し、お尻の筋肉を使えるようにしてから、椅子にゆっくり座る、低い台からゆっくり降りるといった下山に近い動きへ進むのがおすすめです。量を増やすのは最後の段階にしてください。
Q. 膝が痛いときは登山を休んだ方がいいですか?
腫れ・熱感・夜間痛・安静時の痛みがあるときは、登山もトレーニングも休み、医療機関を受診してください。痛みが落ち着き運動の許可が出たら、動かさない期間を長くしすぎないよう、負担の少ない動きから再開し、膝に頼らない使い方を身につけていくことが大切です。