この記事の要点
- 登山の腰痛は、ザックの重さそのものより「股関節が担うはずの動きを腰が肩代わりしている」ことで起きやすい。
- 登りで上体を前に倒すとき股関節が曲がらないと腰が丸まり、股関節の前側が硬いと一歩ごとに腰が反る。どちらも腰に負担が集まる。
- 片膝を抱えるチェックと、股関節から前に倒れる練習で自分の型を知り、しびれや安静時の痛みがあれば先に医療機関へ。
山から帰ると腰が重い、休憩でザックを下ろした瞬間に腰が伸びない。そんなとき、多くの方は「荷物が重すぎた」と考えます。もちろん重さは影響しますが、同じ重さを背負っても腰が痛くなる人とならない人がいます。理学療法士として動作を見ていると、その差は腰ではなく股関節にあることがほとんどです。この記事では、登山で腰に負担が集まる二つの型と、股関節から整えていく順番を解説します。
腰が痛くなるのは、股関節の仕事を腰が肩代わりしているから
腰の骨(腰椎)は、本来大きく曲げたり反らしたりを繰り返すのが得意な場所ではありません。上体を前に傾ける、脚を後ろへ送るといった大きな動きは、そのすぐ下にある股関節が担うのが理想です。
ところが股関節が硬くなっていると、足りない動きを腰が代わりに出すことになります。平地を歩くだけなら気にならなくても、登山では急な登り・段差・重い荷物が重なり、その肩代わりが一日に何千回も繰り返されます。腰痛はその積み重ねの結果として表に出てきます。
ザックの重さは「増幅器」
重さは、すでにある肩代わりを大きくする増幅器のようなものです。荷物を軽くすると楽にはなりますが、股関節が動かないままでは、長い行程の後半や下りで同じ痛みが戻ってきやすくなります。逆に言えば、股関節が動くようになれば、同じ荷物でも腰にかかる負担の大きさは変えられるということです。
登山の腰痛に多い2つの型
型1:登りで腰が丸まる「前かがみ型」
急な登りでは、重心を前に移すために上体を前に傾けます。このとき股関節から折れずに、背中から腰にかけて丸まってしまうのがこの型です。太ももの裏やお尻が硬い人に多く、腰の後ろ側の組織が引き伸ばされた状態で荷物の重さを支え続けることになります。
型2:一歩ごとに腰が反る「反り腰型」
後ろ脚で地面を押して身体を前に送るとき、股関節の前側(脚の付け根)が硬いと脚が後ろに伸びきらず、その分だけ腰が反って帳尻を合わせます。ザックの重さで後ろへ引かれると反りはさらに強まり、腰の骨の後ろ側どうしが押し付けられるような負担がかかります。休憩後に腰が伸びにくい人は、この型が混じっていることが多いです。
実際には両方を持っている方も多く、登りでは前かがみ型、平坦な道や下りでは反り腰型、と場面によって崩れ方が変わることもあります。
痛むタイミングで型の見当をつける
- 登っている最中に腰の下のほうが張ってくる:前かがみ型の可能性。上体を倒すたびに腰が丸まっている。
- 休憩でザックを下ろした後、腰がすぐに伸びない:反り腰型か、前かがみ型で腰の後ろが引き伸ばされ続けた後のこわばり。
- 翌朝、腰を反らすと痛い:反り腰型の可能性。一歩ごとの反りが積み重なっている。
- 翌朝、靴下をはく動作がつらい:前かがみ型の可能性。お尻と太ももの裏の硬さが残っている。
これはあくまで見当をつけるための目安で、実際には下の評価で股関節の動きを確かめてから判断します。
理学療法士が初回評価で見ること
B.E.Tの初回評価では、腰を押して痛む場所を探すより、股関節がどこまで動き、腰がどこで代わりに動いているかを確認します。
仰向けで片膝を抱えた時に反対の太ももが浮くか
仰向けで片膝を胸に抱えたとき、伸ばしている側の太ももが床から浮いてくる場合、脚の付け根の前側が硬くなっているサインです。反り腰型の目安になります。
立って前に倒れる時、股関節から折れるか
膝を軽く緩めて上体を前に倒すとき、お尻が後ろへ引けて股関節で折れるか、お尻の位置が変わらず背中と腰だけが丸まるかを横から見ます。前かがみ型の目安です。
片脚を後ろへ引いた時に腰が反るか
立ったまま片脚を後ろへ引き、つま先で床に触れる動きをしてもらいます。脚が後ろへ行く前に腰が反ってしまう人は、登山の一歩一歩で同じ反りを繰り返しています。
B.E.Tの60分で、股関節から腰の負担を減らす
B.E.Tでは1回60分を「評価 → 整体 → トレーニング」の順で進めます。腰痛の場合も、腰だけをほぐすのではなく、腰に肩代わりさせている股関節を先に動けるようにします。考え方の全体像は整体×トレーニングとはで紹介しています。
- 評価:前かがみ型・反り腰型のどちらが強いか、左右差があるかを確認する。
- 整体:前かがみ型ならお尻と太ももの裏、反り腰型なら脚の付け根の前側と太ももの前をゆるめ、股関節が曲がる・伸びる範囲を戻す。
- トレーニング:股関節から上体を倒すヒンジ動作、お尻で脚を後ろへ送るブリッジ、腰を反らさずに片脚を後ろへ引く練習へとつなげる。
股関節が動くようになったら、その位置で胴体を支える体幹の練習も加えます。ザックを背負ったときの姿勢づくりは登山のための体幹トレーニング(初心者)で段階別にまとめています。
自宅でできるセルフチェックと最初の一歩
セルフチェック:片膝抱え
- 床に仰向けになり、両脚を伸ばす。
- 片膝を両手で胸に引き寄せる。
- 伸ばしている側の太ももの裏が床から浮くか、膝が曲がってくるかを確認する。反対側も同様に。
浮く側がある方は、脚の付け根の前側が硬く、一歩ごとに腰が反っている可能性があります。
最初の一歩:膝立ちで脚の付け根を伸ばす
片膝立ちになり、後ろ脚側のお尻を軽く締めて、骨盤を少し後ろへ傾けます。腰を反らさないまま、脚の付け根の前が伸びるのを感じて30秒。腰を反らせて前に乗り出すと、伸ばしたい場所ではなく腰が動いてしまうので注意してください。
腰痛の背景をより広く知りたい方は、腰痛の原因と改善法も参考になります。
現場でよく見る、腰をさらに疲れさせるパターン
- 腰が痛いからと腹筋運動を増やす:上体を丸める腹筋運動は、前かがみ型の人にとって腰の負担を増やすことがある。
- 痛む腰を反らすストレッチばかりする:反り腰型の人は、反らす動きで一時的に楽になっても負担のかかる場所は同じ。
- ザックを軽くすることだけで対処する:荷物を減らす工夫は大切だが、股関節の硬さが残っていれば行程の後半で同じ痛みが出やすい。
- 休憩でザックを下ろす時、腰から前屈する:疲れた状態での前屈は腰への負担が大きい。膝とお尻を使ってしゃがんでから下ろす。
受診の目安と、B.E.Tに相談できること
脚にしびれが出る、足に力が入りにくい、安静にしていても痛む、夜間に痛みで目が覚める、急に強い痛みが出て動けない、といった場合は、トレーニングより先に医療機関を受診してください。整体は医療行為ではないため、こうした症状の原因を確かめる役割は医療機関にあります。
登山の後や長時間歩いた後に腰が重くなるけれど、日常生活では大きな支障がないという方は、股関節の使い方を見直すことで負担を分散できる可能性があります。大阪・心斎橋(南船場)のB.E.Tでは、理学療法士が動作を評価し、整体とトレーニングで股関節から整えます。ネット予約から初回体験90分 ¥5,500をお選びいただけます。
よくある質問
Q. 登山で腰が痛くなるのはザックが重すぎるからですか?
重さは負担を大きくしますが、根本は股関節が曲がらない・伸びない分を腰が肩代わりしていることが多いです。同じ重さでも腰が痛くならない人がいるのはこのためです。荷物を見直すと同時に、股関節の動きと使い方を整えることをおすすめします。
Q. 登りで腰が痛くなる人と、下りで痛くなる人の違いは?
登りで痛む人は、上体を前に倒すときに股関節から折れず腰が丸まる前かがみ型が多く、平坦な道や下りで痛む人は、脚の付け根が硬く腰が反る反り腰型が多い傾向があります。どちらの型かによって、ゆるめる場所と鍛える筋肉が変わります。
Q. 登山の腰痛予防にはどんなストレッチがいいですか?
反り腰型なら、片膝立ちで腰を反らさずに脚の付け根の前を伸ばすストレッチ、前かがみ型ならお尻と太ももの裏を伸ばすストレッチが合いやすいです。ただし伸ばすだけでは姿勢が戻りやすいため、股関節から上体を倒す練習やお尻の筋トレと組み合わせてください。