この記事の要点

  • ザックを背負うと重さで身体が後ろへ引かれ、首を前に出すか腰を反らせて釣り合いを取るため、肩・首・腰が先に疲れる。
  • 登山の体幹は、肋骨と骨盤を上下に積み重ねたまま呼吸し、歩いても揺れない状態を保つ力。腹筋の回数より先に覚えたい。
  • 初心者は壁立ちと呼吸のチェックから始め、仰向け・四つ這い・荷物を持って歩く種目へと段階を上げていく。

「登山には体幹が大事」と聞いて、腹筋運動やプランクを頑張ってみたものの、ザックを背負って歩くとやっぱり肩や腰が疲れる。初心者の方からよく受ける相談です。登山で求められる体幹は、床の上で長く耐える力とは少し性質が違います。重さを背負った状態で、肋骨と骨盤の位置を崩さずに呼吸し、歩き続けられるかどうか。理学療法士の視点から、ザックで姿勢が崩れる仕組みと、初心者が順番に取り組める体幹トレーニングを紹介します。

ザックを背負うと、なぜ姿勢が崩れて疲れるのか

ザックの重さは背中の後ろ側にかかるため、何もしなければ身体は後ろへ倒れようとします。人はそれを打ち消すために、無意識に次のどちらかの方法で釣り合いを取ります。

どちらも、肋骨と骨盤が上下にまっすぐ積み重なった位置からずれています。ずれたまま何時間も歩くと、本来は姿勢を支える役割のないところが働き続けることになり、脚より先に肩・首・腰が疲れてしまいます。

体幹の役割は「積み重ねを保つこと」

お腹の奥の筋肉、横隔膜、骨盤の底の筋肉、背骨のそばの小さな筋肉は、胴体を筒のように内側から支えています。この筒が働いていれば、ザックの重さを背骨と骨盤でまっすぐ受け止められ、上半身の余計な力みが減ります。

腹筋運動やプランクだけでは足りない理由

上体を起こす腹筋運動は、お腹の前の筋肉を縮める練習です。登山で必要なのは、背負った重さや脚の振りに対して胴体が反ったり傾いたりしないように耐え続ける力なので、目的が少し違います。

プランクは耐える練習に近いものの、初心者がやると腰が反ったまま、あるいは肩に体重を乗せたまま秒数だけを伸ばしてしまうことがよくあります。崩れた姿勢で長く耐えても、ザックを背負ったときの崩れ方と同じ癖を強めるだけです。

初心者は「何秒耐えられるか」より、呼吸しながら肋骨と骨盤の位置を保てるかを基準にしてください。腰が反りやすい方は、登山で腰が痛くなる原因で股関節との関係も解説しています。

理学療法士が初回評価で見ること

B.E.Tの初回評価では、体幹の強さを測る前に、そもそも胴体を積み重ねた位置に置けるかを確認します。

壁立ちで接地する場所

壁に背をつけて立ち、後頭部・肩甲骨・お尻・かかとが無理なく壁に触れるかを見ます。後頭部が届かない人は首が前に出る型、腰と壁のすき間に手のひらがすっぽり入る人は腰を反らせる型の崩れ方をしやすい傾向があります。

呼吸で下の肋骨が動くか

脇腹の下の肋骨に手を当てて息を吸ったとき、肋骨が横や後ろへ広がるか、肩や胸の上だけが持ち上がるかを確認します。肩で呼吸する人は、ザックの肩ベルトで胸の上が圧迫されたときに息苦しさを感じやすくなります。

腕を上げた時に腰が反るか

両腕を頭の上へ上げたときに、肋骨が前に開いて腰が反るかを見ます。胸の背骨や肩まわりが硬いと、その分を腰が代わりに反って補います。ザックを背負う・下ろす動作でも同じ崩れが起きます。

初心者向け、体幹トレーニングの3段階

体幹は、寝た姿勢 → 四つ這い → 立って荷物を持つ、の順に難しくなります。前の段階で姿勢が保てたら次へ進んでください。

段階1:仰向けで肋骨を下げる呼吸

仰向けで膝を立て、下の肋骨に手を当てます。鼻から吸って肋骨を横に広げ、口から長く吐きながら肋骨が下がっていくのを感じます。吐き切ったときにお腹の奥が軽く締まる感覚が、体幹が働き始めた合図です。5呼吸を2セット。

段階2:四つ這いで片手・片脚を伸ばす

四つ這いになり、背中を平らに保ったまま右手と左脚を床と平行に伸ばし、2秒止めて戻します。腰が反ったり、骨盤が傾いたりしない範囲で伸ばすのがポイントです。左右交互に6回ずつ。

段階3:片手に荷物を持って歩く

水を入れたペットボトルや買い物袋を片手に持ち、身体が持った側に傾かないように、まっすぐ立ったまま20歩ほど歩きます。持ち替えて同様に。重さで横に倒れようとする力に耐える練習で、ザックを背負って片脚ずつ体重を乗せる登山の動きに近づきます。

B.E.Tの60分で進める、ザックに負けない身体づくり

B.E.Tの1回60分は「評価 → 整体 → トレーニング」の順です。体幹のトレーニングを効かせるには、先に胸の背骨や肩まわり、股関節の前側の硬さをゆるめ、肋骨と骨盤を積み重ねられる位置に戻しておく必要があります。全体の考え方は整体×トレーニングとはで詳しく紹介しています。

  1. 評価:壁立ち、呼吸、腕上げで、首が前に出る型か腰が反る型かを見分ける。
  2. 整体:胸の背骨のまわり、肩甲骨の内側、股関節の前側をゆるめ、呼吸で肋骨が動く余地を作る。
  3. トレーニング:呼吸と体幹の練習から入り、片脚で立つ・台に上がる動きの中で胴体の位置を保つ練習へつなげる。必要に応じて重りを背負った状態でも確認する。

体幹だけを切り離して鍛えるのではなく、脚の動きと組み合わせて「歩きながら崩れない」状態を目指すのが登山向けの進め方です。足元の安定まで含めて整えたい方は、登山で足首をひねりやすい人の鍛え方もあわせてどうぞ。

現場でよく見る、初心者がつまずくパターン

体幹の練習は、1回にたくさん行うより、短い時間を週に何度も繰り返す方が姿勢の癖として定着しやすくなります。歯みがきの後に呼吸を5回、買い物の帰りに袋を片手で持って数十歩、というように生活の中に組み込むと続けやすいでしょう。最初の数週間は「できた回数」ではなく、「崩れずにできたか」を記録する意識で取り組んでみてください。

まずは自分の崩れ方を知ることから

同じ「ザックで疲れる」でも、首が前に出る型と腰が反る型では、ゆるめる場所も鍛える順番も変わります。自己流で体幹トレーニングを続けて手応えがない方は、自分の崩れ方を一度確かめてみてください。肩や腰にしびれや強い痛みがある場合は、トレーニングの前に医療機関で相談することをおすすめします。

大阪・心斎橋(南船場)のB.E.Tでは、理学療法士が姿勢と動作を評価したうえで、整体とトレーニングを組み合わせて進めます。ネット予約から初回体験90分 ¥5,500をお申し込みいただけます。

よくある質問

Q. 登山初心者は体幹トレーニングを何から始めればいいですか?

まずは仰向けで膝を立て、下の肋骨を横に広げて吸い、長く吐きながら肋骨を下げる呼吸から始めてください。胴体を内側から支える筋肉が働く感覚をつかんでから、四つ這いで手脚を伸ばす種目、荷物を持って歩く種目へと段階を上げていくと、崩れにくい体幹が身につきます。

Q. プランクは登山の体幹トレーニングに向いていますか?

胴体が崩れないよう耐える練習なので役立ちますが、腰が反ったまま秒数を伸ばしても効果は薄くなります。呼吸を止めず、肋骨と骨盤の位置を保てる短い時間で区切る方が安全です。最終的には立った姿勢や片脚での種目に進めることをおすすめします。

Q. ザックを背負うと肩や首がこるのは体幹が弱いからですか?

体幹の働きが足りないことに加えて、ザックの重さで後ろへ引かれるのを首を前に出して打ち消していることが多いです。壁立ちで後頭部が壁につくか、呼吸で下の肋骨が動くかを確認し、首が前に出る型なら胸の背骨の動きと呼吸から整えていきます。

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