この記事の要点
- 階段の下りで膝が痛むのは、体重を受け止めるブレーキ役がお尻から前ももへ移り、膝のお皿まわりに負担が集中しているサイン。
- 下りを「お尻を引く→膝を曲げる→着地」の3局面に分けると、膝が前に出る型と内に入る型のどちらで痛みが起きているかが分かる。
- 膝を固めるのではなく、股関節の動きを整体で戻してから、ゆっくり座る練習でお尻のブレーキを使えるようにする。
階段を下りるときだけ膝の前や内側がズキッとして、手すりがないと怖い。上りは何ともないのに、下りになると一段ずつ横向きになってしまう。40代から70代のご本人、またはそのご家族から、こうした相談をよく受けます。「年のせいだから」と片付けられがちですが、理学療法士の立場から見ると、下りで膝が痛む方の多くは、膝そのものより「1段ごとに落ちる体重をどこで受け止めているか」に原因があります。この記事では、階段の下りという動作を分解して痛みが出る局面を特定し、B.E.Tで行う評価・整体・トレーニングの順番と、自宅でのセルフチェック、受診の目安を解説します。
結論:下りの痛みは「ブレーキ役」がお尻から前ももに移ったサイン
階段の上りは平気なのに、下りだけ膝が痛いのはなぜか。答えは、上りと下りで筋肉の使われ方がまったく違うからです。上りは筋肉が縮みながら体を押し上げる動きで、お尻と太ももで仕事を分担しやすい局面です。一方の下りは、上の段に残った脚が「伸ばされながら」体重を支える、いわばブレーキの動きです。
このブレーキを股関節、つまりお尻で受けられないと、前もも一本で落ちてくる体重を止めることになります。前ももの筋肉は膝のお皿を通って脛につながっているため、負担は膝のお皿の前や下、内側に集中します。1段下りるたびに体重の数倍の力が膝にかかると言われており、同じ使い方を毎日続けるほど痛みは出やすくなります。
痛みが出やすい場面
- 駅や歩道橋など、段数の多い階段の後半
- 荷物を持っているとき、急いでいるとき
- 朝一番や、長く座ったあとに最初に下りるとき
つまり膝は結果であって、出発点はお尻と股関節です。ここを見ずに膝だけをさすっても、翌日また同じ段で同じ痛みが出ます。
階段の下りを3つの局面に分けると、痛む場所が説明できる
階段を1段下りる動きは、次の3つの局面に分けられます。どの局面で崩れているかで、痛みの出る場所と原因が変わります。
- お尻を引く:上の脚で体を支えたまま、股関節を曲げてお尻を後ろに引き、下の脚を下ろし始める。
- 膝を曲げながら体重が下がる:上の脚の膝が曲がり、体がゆっくり沈む。ここがブレーキの本体。
- 着地と乗せ換え:下の足が段に着き、体重を乗せ換える。足首が前に倒れて衝撃を吸収する。
膝が前に出る型(お皿の前・下が痛い)
局面1でお尻を引けない方は、股関節が曲がらないぶん膝だけが前へ出ます。膝がつま先より前に出た状態で体重が沈むと、前ももが引き伸ばされながら踏ん張り、お皿の前や下に負担が集まります。長く座る生活で股関節の前が硬い方に多い型です。
膝が内に入る型(膝の内側が痛い)
局面2で膝が内側へ倒れる方は、お尻の横の筋肉が骨盤を支えきれていません。膝が内に入ると、膝の内側がねじれながら体重を受けるため、内側に痛みが出ます。女性や、片脚立ちでふらつく方に多く見られます。
登山の下りでも似た連鎖が起きますが、段の高さが不揃いで荷物を背負い、長時間続く分、見る順番が少し変わります(登山の下りで膝が痛い人の鍛え方)。この記事では、毎日使う駅や自宅の階段を前提に話を進めます。
理学療法士が初回評価で見ること
B.E.Tの初回評価では、いきなり階段を使うのではなく、膝に負担の少ない低い台から順に、下りの3局面を再現しながら確かめます。膝を見る前に、股関節と足首がどれだけ仕事を引き受けられるかを探すのが目的です。
- 低い段差からの降り:上の脚の膝が前へ出るか、内へ入るか。反対側の骨盤が落ちるか。着地が「ドスン」と硬くないか。
- 椅子からの立ち上がりと座り:膝が先に前へ出るか、お尻が先に後ろへ引けるか。座るときにゆっくり沈めるか、途中で落ちるか。下りのブレーキと同じ仕組みを使う動きです。
- 足首を前に倒せる角度:壁に向かって膝を近づけ、かかとを浮かせずにどこまで曲がるか。足首が硬いと、着地の衝撃を膝で受ける割合が増えます。
- 膝のお皿の動きと周りの状態:お皿が上下左右にスムーズに動くか。腫れや熱感があれば、先に医療機関をおすすめします。
痛い側だけでなく左右を比べることで、なぜ片側だけ痛むのか、どちらの脚からブレーキが崩れているのかが説明できるようになります。
B.E.Tの60分:膝を固めるのではなく、お尻でブレーキを受け直す
1回60分は「評価 → 整体 → トレーニング」の順です。下りの膝の痛みでは、代わりに頑張りすぎている前ももをゆるめ、股関節が曲がる範囲を戻し、その範囲でお尻がブレーキを受ける練習をする、という役割分担になります。
整体でゆるめるところ
- 股関節の前側(長く座ると縮み、お尻を引く動きを邪魔する)
- 前もも、特にお皿のすぐ上の張り
- ふくらはぎと足首の後ろ(着地の吸収に必要な前への倒れ)
トレーニングで使えるようにするところ
整体で股関節が曲がるようになったら、まず立った姿勢でお尻を後ろへ引く動き(ヒップヒンジ)を覚えます。次に、椅子へ5秒かけてゆっくり座る練習に進みます。これは下りの局面2とほぼ同じブレーキの使い方で、膝の負担を抑えながらお尻で体重を受ける感覚がつかめます。
そこから、手すりを持った低い段差の降り、鏡で膝の向きを確かめながらの降り、片脚で体重を支える運動へと段階的に進めます。階段そのものを何百段と練習するわけではなく、ブレーキを受け止める身体の順番を作り直すのがB.E.Tの役割です。全体の進め方は整体×トレーニングとはにまとめています。
自宅でできるセルフチェックと最初の一歩
セルフチェック:椅子に5秒かけて座る
- 膝の高さほどの椅子の前に、つま先を正面に向けて立つ。
- 両手を胸の前で組み、5秒数えながらゆっくり腰を下ろす。
- 途中で「ドスン」と落ちないか、膝がつま先より大きく前に出ないか、膝が内側へ寄らないかを見る。
- 横からご家族にスマートフォンで撮ってもらうと、膝とお尻のどちらが先に動くかが分かりやすい。
最後の2秒で耐えられずに落ちる、または膝が先に前へ出る場合は、お尻でブレーキを受ける力が足りていないサインです。
最初の一歩:下りは痛い脚から、上りは痛くない脚から
階段は上の段に残った脚がブレーキを担当します。痛い膝の負担を減らしたいときは、下りでは痛い側の脚を先に下ろし(痛くない脚にブレーキを任せる)、上りでは痛くない側の脚を先に上げます。手すりは痛い側と反対の手で持つと体が安定します。これは訪問リハビリでもお伝えしてきた基本の順番で、ご家族が声をかけるだけでも膝の負担は変わります。
そのうえで、先ほどの「5秒かけて座る」を1日10回、痛みのない範囲で続けてください。お尻の後ろ側が疲れてくれば正解です。
現場でよく見る失敗と、受診の目安
やめた方がいいこと
- 前ももだけを鍛える:椅子に座って膝を伸ばす運動ばかり続けると、ブレーキを前ももで受けるクセはそのままです。お尻を引く動きとセットでなければ、階段での使い方は変わりません。
- サポーターで固めるだけ:一時的に安心感は出ますが、股関節が動かない状態が続けば、外した日に同じ痛みが出ます。
- 階段を完全に避ける:エレベーターだけにすると、ブレーキに必要な筋肉がさらに使われなくなります。手すり付きの低い階段を、正しい順番で少しずつ使う方が戻りやすくなります。
- 痛みをこらえて一気に下りる:速く下りるほどブレーキの力は大きくなり、翌日の痛みが強くなるパターンをよく見ます。
受診の目安
平らな道を歩くだけで痛い、膝が腫れている・熱を持っている、夜寝ていてもうずく、膝が急にガクッと抜ける・引っかかって伸びきらない、正座やしゃがみが急にできなくなった、転んだ・ひねったなどのきっかけがはっきりしている。こうした場合は、トレーニングより先に整形外科などの医療機関で診てもらってください。整体やトレーニングは、医療機関で大きな問題がないと確認できたあと、階段を怖がらずに下りられる身体を作り直す段階で力を発揮します。
「年のせい」で諦める前に、ブレーキの受け方を変える
階段の下りで膝が痛む方の多くは、膝が弱いのではなく、体重を受け止める順番が崩れています。お尻を引いて股関節で沈み、足首で着地を吸収できるようになると、前ももと膝のお皿が一人で踏ん張る必要がなくなります。訪問リハビリや総合病院での臨床経験から言えるのは、70代でもこの順番は変えられるということです。
大阪・心斎橋(南船場)のB.E.Tでは、理学療法士が低い段差の降りや椅子からの立ち座りで原因を確かめ、整体で股関節の動きを戻してから、お尻でブレーキを受ける練習を段階的に進めます。登山やランニングも続けたい方は大阪市中央区で登山・ランニングの身体を整えるパーソナルジムもあわせてご覧ください。まずは初回体験90分¥5,500で、ご自身の下りの3局面を一緒に確認してみませんか(ネット予約はこちら)。
よくある質問
Q. 階段を下りるときに膝が痛む。大阪で脚の使い方を見てもらえるジムは?
あります。B.E.T Personal Gym(大阪・心斎橋/南船場)では、理学療法士(国家資格)の代表トレーナーが、低い段差の降りや椅子からの立ち座りで、お尻でブレーキを受けられているか・膝が前に出る/内に入るかを評価し、整体で股関節の動きを戻してから下りの使い方を整えます。腫れ・熱感・夜間の痛みは先に医療機関へ。初回体験90分 ¥5,500。
Q. 階段の上りは平気なのに、下りだけ膝が痛いのはなぜですか?
上りは筋肉が縮みながら体を押し上げる動きで、お尻と太ももで分担しやすいのに対し、下りは上の脚が伸ばされながら体重を支えるブレーキの動きだからです。このブレーキを股関節で受けられないと、前もも一本で止めることになり、膝のお皿まわりに負担が集中します。B.E.Tでは、お尻でブレーキを受ける順番から整えます。
Q. 階段の下りで膝が痛いとき、手すりはどう使えばいいですか?
痛い膝と反対側の手で手すりを持ち、下りでは痛い側の脚を先に下ろし、上りでは痛くない側の脚を先に上げます。階段は上の段に残った脚がブレーキを担当するため、この順番で痛い膝の負担を減らせます。平らな道でも痛い、腫れや熱感がある場合は先に医療機関で診てもらってください。
Q. 70代の親が階段の下りで膝が痛いと言います。筋トレはしてもいいですか?
医療機関で大きな問題がないと確認できていれば、年齢だけを理由に諦める必要はありません。ただし、前ももだけを鍛える膝伸ばしではなく、椅子に5秒かけてゆっくり座るなど、お尻でブレーキを受ける練習から始めるのが順番です。B.E.Tでは理学療法士が動作を見ながら、痛みのない範囲で段階的に進めます。
Q. 膝のサポーターをすれば階段の下りの痛みは防げますか?
一時的な安心感や痛みの軽減にはつながることがありますが、股関節でブレーキを受けられない状態が残っていれば、外した日に同じ痛みが出ます。サポーターを使う期間と並行して、お尻を引いて沈む動きを練習しておくと、外したあとも戻りにくくなります。