この記事の要点
- シンスプリントは、すねの内側の骨に、足裏を支える筋肉の引っ張りと着地の衝撃がくり返し集まって起きやすい。
- 背景には足首の硬さ、土踏まずのつぶれ、股関節のひねりの不足があり、休むだけではこれらが変わらない。
- 関節の動きを整えてから足裏・ふくらはぎの奥・お尻を鍛え、走る量を段階的に戻すことが再発予防になる。
すねの内側、くるぶしから少し上のあたりがじわじわ痛む。休むと落ち着くのに、走り出すとまた出てくる。シンスプリントは、走り始めの時期や練習量を増やした時期に出やすく、くり返しやすいのが特徴です。休めば痛みは引いても、痛みを生んだ身体の使い方はそのまま残るからです。この記事では、理学療法士の立場から、すねの内側に負担が集まる仕組みと、足首と股関節から見直す予防・再発防止の身体づくりを解説します。
シンスプリントで何が起きているのか
すねの骨の内側、下から3分の1あたりには、土踏まずを支える筋肉(後脛骨筋)や、ふくらはぎの奥の筋肉(ヒラメ筋)が付いています。着地のたびに、これらの筋肉は足が内側へ倒れすぎないようブレーキをかけ、その引っ張りがすねの骨の表面に伝わります。
1回ごとの引っ張りは小さくても、走る量が急に増えたり、骨や筋肉の回復が追いつかないまま走り続けたりすると、すねの内側に炎症のような痛みが出てきます。これがシンスプリント(脛骨の内側の痛み)と呼ばれる状態です。
出やすい時期・条件
- 走り始めて数週間、または練習量や頻度を一気に増やした時期
- アスファルトなど硬い路面ばかりを走っている
- クッションのへたったシューズを使い続けている
- 疲れて足元が雑になる、練習の後半や連日の練習
走る量の管理はもちろん大切ですが、同じ練習量でも出る人と出ない人がいます。その差を作っているのが、足首と股関節の使い方です。
足首から見る:硬さとつぶれが引っ張りを強める
足首を前に倒せない
着地で体重が乗ると、すねは前に倒れて衝撃を吸収します。足首が硬く、この角度が足りないと、体は足を内側へ倒して代わりの逃げ道を作ります。足が内へ倒れるほど、土踏まずを支える筋肉は強く引き伸ばされ、すねの内側への引っ張りが増えます。
土踏まずがつぶれたまま戻らない
着地で土踏まずがたわむのは正常ですが、足裏の筋肉が疲れていると、つぶれたまま次の蹴り出しに入ってしまいます。つぶれている時間が長いほど、すねの内側の筋肉は伸ばされ続けます。走っている後半や連日の練習で痛みが強くなるのは、この疲労の影響が大きいと考えています。
ふくらはぎの張りが先に出る方は、同じ足首の問題が別の形で表れていることがあります(走るとふくらはぎが張る原因)。
股関節から見る:上からのひねりも足元に届く
足元の問題だけを見ていると、再発の理由を見落とすことがあります。着地で太ももが内側へ回り込むと、すねも一緒に内へ回り、足はさらに内側へ倒されます。上から押し込まれる形で、土踏まずのつぶれが強まるのです。
太ももが内へ回り込むのは、股関節を外へひねって支えるお尻の筋肉が働かない、あるいは股関節の動きに左右差があるときです。膝が内に入る癖も同じ流れから生まれるため、膝の内側の痛みとシンスプリントが同じ側に出る方もいます(ランニングで膝の内側が痛い原因)。
3方向の関係を整理すると
- 足首が前に倒れない → 足が内へ倒れて逃げる
- 足裏が疲れて土踏まずがつぶれる → すねの内側の筋肉が引き伸ばされる
- 股関節で太ももを支えられない → 上から足元のつぶれを強める
シンスプリントをくり返す方の多くは、このうち2つ以上が重なっています。足首だけ、足裏だけを整えても再発する場合は、残りの1つが見落とされていることが多いため、評価では3方向を必ずセットで確かめます。どれが一番大きな要因かによって、整体でゆるめる場所もトレーニングの順番も変わります。
理学療法士が初回評価で見ることと、B.E.Tの60分
初回評価では、痛む場所を確かめたうえで、足首・足部・股関節を順に調べます。
- 足首を前に倒せる角度:壁に向かって膝を前へ出し、かかとが浮かずにどこまで進むか。左右差も確認します。
- 座位と立位での土踏まずの高さ:座ったときと立ったときで、足の内側のくるぶしの下にある骨の出っ張りがどれだけ下がるか。
- 片脚立ちと片脚スクワット:膝がつま先より内へ入らないか、足が内側へ倒れていかないか。
- 股関節のひねり:うつ伏せで膝を曲げ、すねを内外に倒したときの動きの大きさと左右差。
60分の中では、整体でふくらはぎの奥の筋肉、すねの内側の奥の筋肉の緊張をゆるめ、足首の関節が前に倒れる動きを戻します。股関節のひねりに制限があれば、そこもあわせて整えます。トレーニングでは、足裏で土踏まずを持ち上げる練習、膝を曲げたかかと上げ、横向きでお尻の奥を使う運動から始め、片脚立ちで足と膝の向きをそろえたまま保つ練習へ進みます。流れの全体はB.E.Tのメソッドをご覧ください。
自宅でできるセルフチェックと予防の一歩
セルフチェック:足裏3点の片脚立ち
- 裸足になり、足裏の3点(親指の付け根・小指の付け根・かかと)を意識して立つ。
- 片脚立ちになり、3点すべてに体重が乗っているかを確かめながら30秒保つ。
- 途中で親指側に体重が流れて土踏まずがつぶれる、小指側が浮いてくる場合は、足裏の支えが不足しています。
- 反対の脚でも行い、左右を比べる。
予防の一歩:片脚立ちのまま膝を軽く曲げる
- 上の片脚立ちの姿勢から、膝をつま先の方向へ少しだけ曲げる。
- このとき土踏まずの高さが変わらないように、足裏3点で床を押し続ける。
- 3秒かけて曲げ、3秒かけて戻す。左右10回ずつ。
膝を曲げると足が内側へ倒れる場合は、曲げる角度を浅くします。膝の向きと足の向きをそろえたまま動けることが、着地でのつぶれを防ぐ練習になります。
再発させないための走り方の戻し方と、受診の目安
現場でよく見る失敗
- 痛みが消えた翌週に元の距離へ戻す:痛みが引いても、骨と筋肉の負担への慣れはまだ戻っていません。痛みのない距離から少しずつ増やし、翌朝にすねを押して痛みが出ないかを確認しながら進めます。
- アーチを支える道具だけで済ませる:インソールやテーピングは負担を減らす助けになりますが、外したときに支えられる足裏とお尻の力も並行して育てます。
- 痛む場所を強く揉む:骨の表面に近い場所なので、強い刺激はかえって痛みを長引かせることがあります。
受診の目安
すねの一点を押すと飛び上がるほど痛い、歩くだけで痛む、安静にしていても痛い・夜間にうずく、すねが腫れている・熱を持っている、という場合は、疲労骨折など骨そのものの問題が隠れていることがあります。走るのをやめ、整形外科などの医療機関で診てもらってください。シンスプリントだと思い込んで走り続けるのは避けましょう。
すねを守るのは、足首と股関節の連携
シンスプリントは、すねの内側という一か所に、足首の硬さ、土踏まずのつぶれ、股関節のひねりがまとめて押し寄せた結果です。休むことで痛みは落ち着いても、この連携が変わらなければ、走る量を戻したときにまた同じ場所に負担が集まります。
B.E.Tでは理学療法士が足首と股関節の動きを評価し、整体とトレーニングで再発しにくい足元を作ります。走る量の戻し方も含めて相談したい方は、初回体験90分¥5,500をネットで予約してください(空き枠を見る)。
よくある質問
Q. シンスプリントの予防に効く筋トレは?
土踏まずを支える足裏の筋肉、ふくらはぎの奥の筋肉(膝を曲げたかかと上げ)、股関節を外へひねって支えるお尻の筋肉を中心に鍛えます。足首が硬い場合は先に動きを戻しておくと、狙った筋肉に効きやすくなります。
Q. シンスプリントは休めば痛みが落ち着く?
休むと痛みは落ち着くことが多いですが、痛みを生んだ足首や股関節の使い方は変わりません。走る量を戻したときに再発しやすいため、休んでいる間に関節の動きと支える筋肉を整えておくことが大切です。
Q. シンスプリントと疲労骨折の違いは?
見分けは医療機関で行う必要がありますが、すねの一点に強い痛みがある、歩くだけで痛い、安静時や夜間にも痛む場合は、骨そのものの問題の可能性があります。自己判断で走り続けず、整形外科を受診してください。