この記事の要点
- しゃがむと膝が痛い人の多くは、お尻を後ろに引けず「膝だけを前に出して深く曲げる」しゃがみ方になっている。
- 背景には股関節を深く曲げられない硬さと、足首を前に倒せない硬さがあり、その分の仕事が膝のお皿まわりに集まる。
- 膝をかばうより、股関節と足首の動く範囲を整体で戻し、お尻で体重を受けるしゃがみ方をトレーニングで身につける。
床に落ちた物を拾う、靴を履く、しゃがもうとした瞬間に膝の前がズキッとして、途中で止めて腰をかがめてしまう。40代から70代の方から、ご本人だけでなくご家族からも「年のせいだと諦めている」という相談をよく受けます。理学療法士の立場から言うと、しゃがんで膝が痛む原因の多くは、膝そのものの弱さではなく、股関節と足首が動かない分を膝が引き受けている「しゃがみ方」にあります。この記事では、しゃがむ動作を分解して痛みが出る局面を整理し、B.E.Tで行う評価・整体・トレーニングの順番を解説します。
結論:膝が痛いのは「お尻を引かずに膝だけで曲げている」から
しゃがむときに膝が痛いのは何が原因か。一言で言えば、股関節と足首が十分に動かず、しゃがむ深さのほとんどを膝の曲げ伸ばしだけで作っているからです。本来しゃがむ動作は、お尻を後ろに引く(股関節を曲げる)、すねを前に倒す(足首を曲げる)、膝を曲げる、の3つが同時に進みます。このうち股関節と足首の分担が減ると、膝だけが深く曲がり、お皿(膝蓋骨)と太ももの骨の間にかかる圧が一気に高くなります。
膝の前やお皿の周りが痛むタイプは、この「膝だけで曲げる」しゃがみ方で起きやすい痛みの代表です。膝をかばって動かさないでいると、股関節と足首はさらに硬くなり、次にしゃがんだときの膝の負担はもっと増えます。だからこそ、見るべきは膝より先に股関節とお尻、そして足首です。
しゃがむ動作を分解する:踵・膝の向き・足首の角度
しゃがみは一瞬の動きに見えますが、理学療法士はいくつかの局面に分けて見ています。どこで崩れるかが分かれば、痛みが出る理由も説明できます。
局面1:しゃがみ始めでお尻が引けるか
最初にお尻を後ろへ引けると、体重はお尻と太ももの裏に乗ります。お尻を引かずに膝を前へ出して始める人は、しゃがみ始めから膝の前に体重が集まります。
局面2:中間で踵が浮かないか
足首を前に倒せる角度が足りないと、すねが前へ倒れきれず、途中で踵が浮きます。踵が浮くと体重はつま先側に逃げ、膝はさらに前へ出て、お皿への圧が最大になります。
局面3:深い位置で膝が内に入らないか
お尻の横の筋肉が働かないと、深くしゃがむ手前で膝が内側へ倒れます。膝が内に入ると、お皿が外へ引かれながら曲がるため、膝の内側や前の痛みにつながります。
局面4:立ち上がりの最初の一押し
一番下から立ち上がる瞬間は、お尻で床を押す力が必要です。ここがお尻ではなく太ももの前だけになると、立ち上がりの最初で膝の前がズキッとします。
踵をつけたまましゃがめない方は、足首と股関節の可動域そのものが出発点になることが多いので、しゃがめない原因は足首と股関節もあわせて読んでみてください。
なぜ股関節と足首が動かないと膝に集まるのか
関節は上下でつながって仕事を分け合っています。しゃがむ深さを「股関節+足首+膝」で作れれば、1つの関節が受ける角度と圧は小さくて済みます。股関節が深く曲がらない人は、お尻を引けない分だけ膝を前に出して深さを稼ぎます。足首が硬い人は、すねを倒せない分だけ踵を浮かせて膝を前に出します。どちらも行き先は同じで、膝のお皿まわりです。
さらに、お尻の筋肉(大殿筋・中殿筋)がうまく働かないと、太ももの前(大腿四頭筋)が代わりに踏ん張ります。太ももの前はお皿を通って膝の下につながる筋肉なので、ここが頑張りすぎるほどお皿は強く押し付けられます。つまり、股関節と足首の硬さが「膝が前に出るしゃがみ方」を作り、お尻の弱さが「太ももの前でこらえる立ち上がり」を作り、両方が膝の前に負担を集めます。
年齢のせいだけではない理由
総合病院と訪問リハビリの現場で、70代でも踵をつけて楽にしゃがめる方はいましたし、40代で膝だけでしゃがんで痛めている方もいました。差を分けていたのは年齢そのものより、股関節と足首を日常でどれだけ使えているかです。「年のせい」と片付ける前に、動く範囲が残っているかを確かめる価値があります。
理学療法士が初回評価で見ること
B.E.Tの初回評価では、しゃがむ動作をそのまま見るだけでなく、その動きを作っている関節と筋肉を一つずつ確かめます。膝の痛みを「どの関節の硬さと、どの筋肉の働き不足の組み合わせか」に分解するのが目的です。
- しゃがみ込み:踵が浮くか、どの深さで浮くか。膝が内に入るか。お尻が先に引けているか、膝が先に前へ出るか。
- 足首を前に倒せる角度:壁に向かって片膝をつき、踵を浮かさずにどこまで膝を壁に近づけられるか。左右差も見ます。
- 仰向けで片膝を抱えたときの反対の太もも:抱えていない側の太ももが床から浮く人は、股関節の前側が縮んで硬く、お尻を引く動きが出にくい状態です。
- 段差の降りで膝の向き:低い台から片脚で降りるとき膝が内に入るか。しゃがみの深い位置と同じ崩れ方が出ます。
- 太ももの前の張り:うつ伏せで膝を曲げたとき、踵がお尻にどこまで近づくか。近づかない人は太ももの前が常に働きすぎています。
痛い側だけでなく反対側も必ず見ます。片側だけ足首が硬いと、しゃがむたびにそちらの膝だけが前へ出るため、「なぜ右膝だけ痛いのか」が説明できるようになります。
B.E.Tの60分:膝ではなく股関節と足首から整える
1回60分は「評価 → 整体 → トレーニング」の順で進めます。しゃがむと膝が痛い方の場合、整体で動く範囲を戻す場所と、トレーニングで働かせる場所がはっきり分かれています。
整体でゆるめるところ
- ふくらはぎの奥と足首の後ろ側(すねを前に倒す動きを止めている)
- 股関節の前側と太ももの前(お尻を引く動きを止め、お皿を押し付けている)
- 股関節の外側へのひねりの制限(膝が内に入る原因になりやすい)
トレーニングで使えるようにするところ
整体で股関節と足首が動く範囲を戻したら、その範囲でお尻を使ってしゃがむ練習に移ります。いきなり深くしゃがむのではなく、椅子に向かってお尻を後ろに引きながらゆっくり座る動きから始め、お尻と太ももの裏に体重が乗る感覚をつかみます。次に座面を少しずつ低くし、最後に踵をつけたまま深くしゃがんで立ち上がる動きへ段階的に進めます。
膝の曲げ伸ばしを鍛えるのではなく、しゃがむ深さを3つの関節で分け合える身体を作るのがB.E.Tの役割です。進め方の全体像はB.E.Tのメソッドにまとめています。
自宅でできるセルフチェックと最初の一歩
セルフチェック:壁に向かってしゃがむ
- 壁に向かって立ち、つま先を壁からこぶし1個分離す。
- 両手を胸の前で軽く組み、踵をつけたままゆっくりしゃがむ。
- 踵が浮く、膝が壁に当たって前に出せない、お尻を引けずに後ろへ倒れそうになる、のどれが起きるかを見る。
踵が浮く人は足首、後ろへ倒れそうになる人は股関節の前側、膝が内へ入る人はお尻の横が、それぞれ出発点になっている可能性があります。痛みが出る深さで止めて構いません。
最初の一歩:椅子へのゆっくり着座
- 椅子の前に立ち、足は肩幅、つま先は少し外向き。
- 手を前に伸ばし、お尻を後ろへ引きながら3秒かけて座面に向かって下りる。
- 座面にお尻が触れたら、床を踵で押すようにして立ち上がる。
- 8回×2セット。お尻と太ももの裏が疲れれば正解です。
膝の前だけが疲れる、または下りる途中で膝の前が痛む場合は、お尻を引く前に膝が前へ出ています。座面を高くして、お尻を引く動きだけを練習してください。
現場でよく見る失敗と、受診の目安
やめた方がいいこと
- サポーターで膝を固めてしゃがみ続ける:膝の動きを制限しても、股関節と足首が動かない状態は変わらず、負担は膝の上下に移るだけです。
- 太ももの前だけを鍛える:椅子に座って膝を伸ばす運動ばかり行うと、お皿を押し付ける筋肉がさらに強く働き、しゃがんだときの圧が増えることがあります。太ももの前が張りやすい方は、関連記事「太ももの前張りの原因」も参考にしてください。
- 痛いまま深くしゃがんで伸ばす:しゃがみ込みをストレッチ代わりにすると、膝の前に圧がかかったまま時間を延ばすことになります。可動域は膝を深く曲げずに、足首と股関節で別々に広げる方が安全です。
立ち上がりの瞬間だけ膝が痛むタイプは、しゃがみとは少し見る順番が違います。椅子からの立ち上がりで痛む方は立ち上がりで膝が痛い原因をあわせて読んでみてください。
受診の目安
膝が腫れている・熱を持っている、夜寝ていてもうずく、歩くだけで痛い、膝が引っかかって伸びきらない・曲がりきらない、ガクッと抜ける感じがある、転んだ・ひねったなどのきっかけがはっきりしている。こうした場合は、トレーニングより先に整形外科などの医療機関で診てもらってください。整体やトレーニングは、医療機関で大きな問題がないと確認できたあと、しゃがめる身体を作り直す段階で力を発揮します。
膝をかばうより、しゃがみ方を作り直す
しゃがむと膝が痛いのは、膝が弱いからではなく、股関節と足首が担うはずの仕事が膝に集まっているサインです。お尻を引いて、すねを倒して、3つの関節で深さを分け合えるようになると、膝のお皿への圧は下がり、床の物を拾う動作が怖くなくなります。登山の下りや段差で膝が痛む方にも同じ見方が当てはまり、大阪市中央区で登山・ランニングの身体を整えるパーソナルジムでも股関節から整える流れを紹介しています。
大阪・心斎橋(南船場)のB.E.Tでは、理学療法士がしゃがみ込みと足首・股関節の動きから原因を確かめ、整体とトレーニングでお尻で支えるしゃがみ方を作ります。まずは初回体験90分¥5,500で、ご自身の踵と膝の向きを一緒に確認してみませんか(ネット予約はこちら)。
よくある質問
Q. しゃがむと膝が痛くて床の物を拾うのもつらい。大阪で相談できるジムは?
あります。B.E.T Personal Gym(大阪・心斎橋/南船場)では、理学療法士(国家資格)の代表トレーナーが、しゃがみ込みで踵が浮くか・膝が内に入るか・足首と股関節の動く範囲を評価し、整体で硬さを戻してからお尻で支えるしゃがみ方を練習します。腫れ・夜間痛・急な強い痛みは先に医療機関へ。初回体験90分 ¥5,500。
Q. しゃがむときに膝が痛いのは何が原因ですか?
股関節と足首が十分に動かず、しゃがむ深さを膝の曲げだけで作っていることが多いです。お尻を引けず膝が前に出ると、お皿と太ももの骨の間の圧が上がり、膝の前が痛みやすくなります。B.E.Tでは股関節と足首を整体で整えてから、お尻を使うしゃがみ方をトレーニングします。
Q. しゃがむと膝が痛いのは年のせいですか?
年齢だけが原因ではありません。足首と股関節の動く範囲が残っていれば、年齢に関わらず踵をつけて楽にしゃがめる方は多くいます。動く範囲が減り、膝だけでしゃがむクセが続くことの方が影響は大きいので、まず足首と股関節の硬さを確かめることをおすすめします。
Q. 膝が痛いときにスクワットはやっていいですか?
痛みが出る深さまで行う必要はありません。椅子へお尻を引きながらゆっくり座る動きのように、浅い範囲でお尻に体重を乗せる練習から始めてください。下りる途中で膝の前が痛む場合は膝が先に前へ出ているので、座面を高くして動きを変える方が先です。
Q. しゃがむと膝が痛いのは病院に行くべきですか?
腫れや熱感、夜間のうずき、歩くだけでの痛み、引っかかって伸びきらない、抜ける感じ、転倒やひねったきっかけがある場合は、先に整形外科で診てもらってください。それ以外の「しゃがむ動作のときだけ痛む」状態は、動き方の問題であることが多く、評価とトレーニングの対象になります。